龍谷大学交響楽団 第24回定期演奏会

第1回 曲解説 


プレゼンター:山田和己

◎グリーグ/「ペール・ギュント」第1組曲

《ペール・ギュント》はノルウェーの劇作家、ヘンリック・イプセンが書いた作品で、これに同郷の作曲家グリーグが音楽を付けた。非常に好評であったため、作曲者自身がこの中から4曲を演奏会用に抜粋し、第1組曲、更に4曲抜粋し、第2組曲として発表した。2曲ともノルウェーを代表する音楽として、今に至るまで親しまれている。おおよその粗筋は次の通りである。破天荒で放浪性に富んだ若者のペール・ギュントは許嫁のソルヴェーグがいながら、村を出て世界各地を放浪する。その間、何度も富や名声を手に入れるが、騙され、殺されかけ、嵐に遭いで何度も無一文になる。やがて白髪交じりになった老人ペールは、疲れ果てて己の人生の無意味さを嘆きながら帰郷したが、そこにはなんとソルヴェーグがずっと独り彼の帰りを待っているという純情物語である。



第1曲〈朝〉ホ長調
誰もが一度は耳にしたことがあろう名曲。小学校や中学校で朝の音楽として親しんだ人
も多いのではないだろうか。舞台は、作曲者の出身地ノルウェーと想像されがちだが実は、アフリカのモロッコである。中年になったペールのモロッコで迎えた朝の気分が表現されている。冒頭フルートからいかにも清々しく、爽やかで美しいテーマから始まり、曲中何度も演奏される。 やがて弦楽器によって盛り上げられていくところは朝日が眩しく輝きながら昇ってくるかのようである。グリーグはこの箇所を「雲の中から輝く太陽が現れることを想像した」と語っている。後半は鳥のさえずりを模したような箇所もあり聴きどころである。


第2曲〈オーゼの死〉ロ短調
ペールの母オーゼを看取る場面を表しており、弱音気を付けた弦楽器によって緊張感が
保たれながら演奏される。どんなに最低なことをしても自分を決して見捨てなかった母親に対してペールは嘆き、少しでも楽にするために空想話を聞かせた。愛する息子に見守られながら眠るオーゼを描いたような、安らかな和音が静かに響いて曲が終わる。葬送曲の
傑作として人々の胸を打ち、ヴァイオリンの独奏曲にもなっている。



第3曲〈アニトラの踊り〉イ短調
砂漠に点在するオアシスが舞台。アラブの娘がペールをもてなし、その娘の中に、酋長の
娘アニトラがいた。足を見せながら官能的で蠱惑的に踊るアニトラにペールは魅了され、彼女にせがまれるままに、貴金属や宝石などを貢ぐ。そのうちアニトラはペールの財産が積ま
れた馬車ごと盗むことに成功し、ペールは無一文になってしまった。この曲はアニトラがペールを誘惑する時の踊りである。弦楽器とトライアングルによって演奏され、どこかエキゾチックで妖しげな魅力を持つメロディが繰り返される。


第4曲〈山の魔王の宮殿にて〉ロ短調
村を出たペールは魔王の国の娘に恋し、更に魔王の国を自分のものにしようと企む。これを聞きつけた魔物たちは苛々しながら待っていた。魔王の宮殿に着いたペールは結婚の条件として魔王の国を自分のものにしたいという旨を魔王に伝える。すると魔王からもいくつか条件が出された。その中に目玉をひっかき、傷つけるというものがあった。流石のペールもこれには恐れおののき、娘を捨てて魔王の国から脱出を試みる。しかし残念ながら捕らえられてしまい、殺されかける。殺される寸前に教会の鐘が鳴り響いて宮殿と魔物は一瞬にして消え失せ、ペールは助かったのであった。
冒頭はどこか不気味でグロテスクな行進曲風の主題がチェロとファゴットによって交互に演奏される。
ヴァイオリンが主題を、裏でヴィオラが魔物の蠢きのようなテーマを演奏し、やがて他の楽器も加わって広がりを見せていく。
後半は主題が段々と発展していくことによって、魔王の国の娘を捨てて逃げようとしたペールに魔物たちが怒り狂い、最高潮になる様が表現されている。また最後の四分音符は、「殺せ殺せ」と叫び迫ってくる様が表現されている。